現代都市政策研究会2025年7月例会感想
7月例会に参加して
O, Y.
7月の例会は、成年後見を手掛けておられる古川健太郎弁護士による成年後見制度の仕組みの実態と課題についてお話を聞く機会を得た。筆者は、成年後見制度が市民にもっと普及し、より使いやすいものにならないものかという考えを持っていたので、この機会に学ばせていただこうと思い参加した。
成年後見制度が、それまでの禁治産者制度に代わって新たにスタートしたのは2000年であった。「新たに」といってもすでに四半世紀前のことであって、当日、熱心に参加されていた若い会員の皆さんにとっては、このような制度変更は歴史的な知識のひとつなのかもしれない。
近年は親族が後見人になるよりも、弁護士や司法書士などの専門職による後見の割合が増加しているとのことであった。専門職の事務所経営という視点からすれば、現在の標準的な報酬額が十分であるとはいえないと理解した。リーガルサービスとして質の高い仕事を行うためには、必要な報酬が保証されないまま、やりがいや社会貢献という動機だけでは長続きはしない。被後見人本人の意思の尊重するためには定期的な面会を行いつつ、ときには金銭を巡って親族との難しい折衝を進めることも多いそうだ。親族は潜在的な相続人であるから、なるべく本人(潜在的な被相続人)の預貯金・年金の目減りを避けたいのも無理はない。しかし、本人の望む生活をさぐり本人の意思を尊重するためには、専門職が盾にならなければいけない場面がある。つまり、権利擁護である。そして、成年後見制度の最も有力な担い手である専門職の参入を確保していくには、制度運用にかかる費用すなわち、報酬のあり方について避けて通ることはできないだろう。誰しも年をとり判断力は衰える。誰しも障がいや疾患を抱えることもある。ささやかであっても自分の財産が子どもたちのもめ事の種になってほしくはないと。だから、成年後見制度は国民に提供される社会的サービスの一つであると理解されるべきである。
折しも、法務省では、成年後見制度の変更となる「民法(成年後見等関係)等の改正に関する中間試案に関する意見募集」を8月25日まで実施中である。ここはひとつ、パブコメに対して、専門職の参入促進のためのインセンティブ方策が必要である-といった内容を出してみようか。そんな意見は法改正とは関係がないから「事業の実施に当たり、今後の参考とします」と一括りにかたずけられてしまうのだろうか。
以上、崇高な福祉の理念の話ではなくて何やらお金の話題ばかりに終始して恐縮に思う。末尾となったが、筆者の視野を広げていただいた古川弁護士に感謝する次第である。
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