現代都市政策研究会2025年12月例会感想
「八王子市における重層的支援体制整備への取組みと課題」を聴いて
M. K.
12月の定例会では、八王子市における重層的支援体制への取組みについて、八王子市福祉政策課の辻野文彦様よりご講演頂きました。また、今月の定例会には、自治体や社会福祉協議会での福祉の現場の最前線でご活躍されている(されてきた)方々が多く参加されておりましたので、質疑応答においては、非常に切迫した現場の課題に関して活発な議論がありました。私自身は、福祉政策の現場の経験がありませんでしたので、辻野氏や参加者皆様のお話をお伺いし、大変勉強になりました。非常に複雑な課題に日々対応されていることに頭が下がる思いです。辻野様、参加者の皆さま大変貴重なお話をありがとうございました。
僭越ながら、私からは簡単な概要と感想を述べさせていただきます。
八王子市では、平成26年度から社会福祉協議会が主体となり「地域福祉推進拠点」を始めていたことから、社会福祉法改正に伴う「重層的支援体制整備事業」の取組を従前、社協が行っていた「地域福祉推進拠点」を包括的な相談事業の窓口として位置付けた上で市事業に移管し、全国に先駆けて令和3年4月から事業を実施されてきたとのことでした(※令和7年現在市内、13か所に「八王子まるごとサポートセンター(以下、「はちまるサポート」と言う。)」を設置)。このはちまるサポートには、福祉の専門職が配置され、相談支援、アウトリーチ支援(訪問支援)、居場所の確保などの地域づくり、課題を抱える方を地域につなぐための支援などを、社会福祉協議会が行う事でより柔軟で専門性を持った支援を市からの受託事業として行ってきた点に、八王子市の重層的支援事業体制整備事業の特徴が見られました。多機関が連携するに当たって社協が地域の課題に専念し、市の福祉政策課が庁内の調整を行う形で事業に取り組んでおり、試行錯誤の下で社協との良い関係を築き政策を行って来られたようでありました。しかしながら、はちまるサポートが、様々な困難な課題の受け皿となり、業務が肥大化し、社協側のマンパワーの不足などにより、本来の社協の強みがなかなか発揮しにくくなったことで、市の施策の方向性を整理し、市の役割の見直しや拠点の集約化も含め立て直しを図るという非常に難しい局面を対応されているとのことでありました。
講義等の中では様々な議論がありましたが、私が特に気になった3点を挙げさせて頂きます。1点目は、事業を委託することで、行政側に知見やノウハウが蓄積されず、行政の政策に現場の知見が反映しにくくなるという点であります。委託によるメリットももちろんありますが、委託を行うことで行政の中の知見や感覚が失われ、コンサルの提案や国が示す検討会の資料等に基づく制度設計がなされる例もあるように感じますので、八王子市の事例は、多くの自治体で直面している課題であると感じました。八王子市が、これから社協との人事交流などを通じて、ノウハウを行政側に知見・技術を持ち帰るという具体的な取り組みを行おうとしている点は非常に興味深いと思いました。
2点目は、八王子市が庁内で包括的な地域福祉ネットワーク会議を係長・主査・主任級の実務レベルで行い、庁内の分野横断的なつながりを作りつつ、合同研修を通じた相互理解の推進を図っている点や社協とも十分な意見交換を行っていることです。このような具体的な連携の取り組みを行うことは、非常に重要でありますが、容易なことではないと思いますので、非常に重要な点であると感じました。
3点目は、国が施策の方向性を転換する中にあっても、八王子市では自治体として何が必要であるかを主体的に考え、AIチャットの相談ツール導入の話もありましたが、試行錯誤をしながら地域に必要な施策に取り組む姿は地方自治体のあるべき姿であると感じました。意見交換中において、社協の方からも行政が覚悟を持って取り組み、行政の縦割りを打破し、社協の取組を応援して欲しいというご意見があったとおり、現場を担う市区町村の役割の大きさを改めて再認識しました。
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