現代都市政策研究会2026年2月・まち歩き感想
まち歩き「武蔵小山商店街パルムの今を歩く」の感想
M. O.
1 驚き、なぜこんな沢山の人が商店街を歩いているのか。
武蔵小山商店街を歩いてまず驚いたのは「なぜこんなに多くの人が商店街を歩いているか。」ということである。この間、まち歩きや観光で多くの商店街を歩いているが、これほどの賑わいを体感するのは初めてである。日曜日の午後であったこともあるが、まるでお祭りが開かれているのではと思うほど、家族連れを中心に賑わっていた。案内をしてくれた商店街事務長尾島さんによると、駅の乗降客は5.4万人で、商店街の通行量は、平日は、3~4万人、土日は6万人とのことである。その理由について尋ねると、商店街の立地優位性について周辺には大規模商業モールもないことから、周辺に住んでいる人は商店街に集まってくるとのことであった。魅力的な個店がそれぞれの経営努力をするともに、集積の利益を活かして個店も収益をあげる好循環があるということで、まるで、アーケードの商店街が大規模商業モールのように一体となって地域の価値をあげているという仕組みである。少しおしゃれをしても、また、気軽にげた履きであっても、まちへ出てみたいと思える空間、環境があり、この商店街の周辺に住みたいたいと思わせる充実度である。日常の買い回りの需要を満たす「ケ」の空間=日常の空間であると同時に、お祭りのような賑わいの「ハレ」の空間=非日常の空間でもある。
個店が連坦する商店街の魅力的な空間は、何か掘り出し物がないかちょっと覗くことができる「開口部」のつくりと、お得な商品を並べる「はみだし陳列」にもあると感じた。下町の商店街の店構えの伝統は、大規模商業モールの店舗づくりにも似ていると感じた。これが、武蔵小山商店街の魅力であり、賑わいや売り上げにもつながっているのではないかと感じた。
2 商店街振興組合の専従事務長
まち歩きの後、商店街振興組合の事務所で、尾島さんのお話を伺った。1947(昭和22)年には、商店街協同組合が設立され長い歴史を持っている。また、組合員数240名、年間事業規模約3億円で、職員は正規、契約、パートを含めて11名という規模で、かつては、50名の職員がいた時代もあるとのことで、これだけの専従者を雇用できる商店街組織が、一つの経営体としてまとまり、大規模商業モールにも負けない経営ができる基盤であると感じた。そして、商店街は、単に個店の売上向上に寄与するのではなく、「パルム憲章」を制定して、商店街まちづくりのマネジメントにも取り組んでいる。この組織が、今後の市街地再開発と商店街振興との調和に寄与できるか、つまり、再開発に参加する各組合員の意向(個別利益)と商店街・まち全体の意向(共同利益)がどう調和できるかにもかかってくると感じた。
3 市街地再開発事業と連坦する商店街の魅力との調和
一方で、商店街の裏には木造住宅の密集地域が広がり、狭い路地があり、防災上の課題が大きい地区でもある。事実、これまでも火災延焼が発生しているとのことであり、市街地開発事業の必要性が高いことが理解できる。ただし、すでに実施された、2つの地区の市街地再開発事業は、三井不動産や住友不動産がディベロッパーとなった高層マンションの典型的な再開発事例である。今後、商店街を抱える形で2地区の再開発事業が予定されているのとのことである。
完成した再開発事業では、商店街沿いの1階部分は、小さな商業店舗を連坦させ、確かに景観的には商店街の連続性やデザインにも配慮した設計となっている。しかし、個店は、全国チェーン店が中心で、店構えはガラス張りではあるが開口部のない閉鎖型の店舗である。この商店街の魅力を探り空間デザインやしつらえの構成要素を建築設計にどう取り込むかが重要であると感じた。事務長からは説明されなかったが、帰宅後、ホームページを検索してみると、品川区都市環境部都市計画課が平成30年3月に発行した「品川区景観計画運用指針 武蔵小山駅周辺地区景観まちづくりアイデアブック」を探し出すことができた。
https://www.city.shinagawa.tokyo.jp/contentshozon/musashikoyama_unyoshishin.pdf
その中では、再開発事業も想定して、地区の「景観形成基準」や「景観デザインのアイデア」を列記している。ただし、これら基準を守りさえすれば、商店街の魅力を引き継ぎ、再現できるとは限らないようである。これまで個々の商店や商店街が積み重ねてきな工夫や努力をなどまちの魅力を読み解き、新たな再開発の中でも実現できるよう、ディベロッパーの実力やデザイナーの実力が問われることになるが、それは、商店街や住民(来街者・利用者)も参画して合意ができるデザインが問われているとも感じた。
事務長からの説明の後、戸越銀座商店街まで足を延ばし、街並みを観察した。戸越銀座は、アーケードではなく、電線類の美化柱など空の広がりを感じさせられる空間であった。また、食べ歩きができるなど武蔵小山とは異なる個店の魅力もあった。双方の商店街に共通するのは、商店街がまち全体の魅力向上に取り組んでいることがわかる空間が見られることである。人の集まる魅力的な空間にはその空間を構成する人びとの営みがあることが理解できた。
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