現代都市政策研究会2019年12月例会感想


「成年後見活動の現状と課題」を聞いて

H.      S.



「成年後見活動をやっていてよかったと感じたことが何回かあるんです。だから、やっています」

懇親会の上山さんの言葉に、私は感動した。



成年後見制度は、平成12年(2000年)の民法改正で制度化された。その後も認知症の方が500万人いるなかで、成年後見制度利用者は22万人しかない。そこで、利用促進を目的に、平成28年「成年後見制度の利用の促進に関する法律」施行、平成29年「成年後見制度利用促進基本計画」が閣議決定され、各種の業界組織がこれにアプローチしている。司法書士の成年後見推進組織「公益社団法人成年後見センター・リーガルサポート」は、民法改正の前年に発足し、全国で8,339名の会員がいるそうだ。



しかし、職能団体や金融機関が成年後見制度にアプローチする時には、はっきり言ってお金儲けの機会と捉える組織もある。

東京では利用促進の協議を行う区が12ある。練馬は社協が中心に協議を進めている唯一の区だけれども、そこにも上澄みというか、おいしそうな(=儲けが出そうな)情報だけ拾いにくる組織もあるという。

司法書士だって、総ての人がリーガルサポートの使命を理解しているわけではなさそうだ。



そんななか、なぜ上山さんはやるのか。懇親会でお聞きして、ああ、そういう気持ちなのだと納得した。

現代都市政策研究会は自治体会員が多いけれども、出世や金儲けを目的にしていないから続いている。まさに、上山さんと同じで、自治の現場で一瞬でも嬉しさを感じてやっている。例えば、生保のケースの1つの事例の解決や都市づくりの一歩の改善に力をいれるのも、同じだと思う。

成年後見の事例を伺うと、リーガルサポートの最低保障月額2万円では見合わないことも多そうだ。それを続けることは専門職でも負担であるし、新たな事例をどう引き受けるか。普通の後見人がどう関われるのか。利用の促進と担い手双方に課題がありそうだ。

最高裁「成年後見関係事件の概況」を見たら、後見の理由は「預貯金の管理・解約」が42%で圧倒的に多く、その次が身上監護21.5%だった。つまり、福祉系の専門職よりも司法書士の活躍の可能性が大きいのが現状だし、任意成年後見に金融機関が参入を図っているのもこれが理由だろう。けれども、事例は常に複合していて、一筋縄ではいかない。とりわけ、引き受ける最初の負担が大きいという。



あるケースでは、本人は認知症なのに自分の状態を認められず、唯一の支援者である息子を泥棒扱いにする。上山さんは週に3回も4回も呼び出されるが、非常に頼りにされたと感じた。このケースは、薬の種類が多く服薬管理が難しく、もう少し薬剤師の力を借りればよかったと考えたそうだ。

また、別のケースでは、特養入居済み要介護4の方で、亡夫の死亡による遺産分割が未完了だった。夫の前妻の子どもが3人いた。上山さんは各々に連絡を取り、被後見人(=本人)がすべて相続することに同意してもらい相続手続きを完了した。その後、定期的に訪問し、様子を見る状態が続いたため、社協に相談し、市民後見人につなぐリレー方式を検討して交代した。

このケースのように、上山さんはリレー方式として、司法書士などの専門職からケースが安定したら市民後見人に引き継ぐことを提唱しているが、それもありだと思う。

一方で、後見制度を利用する障がい者団体等の当事者団体は、社協の法人後見を求めているそうだ。これはコストがかかりすぎる上に、責任の所在が曖昧だと上山さんはいう。

私は、障がい者団体の意見を知らないので、こうだと言い切ることはできない。けれど、もし法人後見をするならば、社協などに実際に後見できるマンパワーを与えないと絵に描いた餅になってしまう。そのための人とお金を手当てできなければ利用促進は進まない。あるいは武蔵野市のようにまるまる福祉公社にやらせていれば可能かもしれないが、お金がない自治体や社協での法人後見は難しいと考える。それぞれの実態にあった救済=後見をすすめることが大事だと思った。



いろいろ考えさせる機会を頂き、上山さんにはとても感謝しています。ありがとうございました。

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