現代都市政策研究会2023年9月例会感想

               都市研も歴史に名を残した

J.H.

講師の小関一史さんは、東松山市の現役の職員でありながら、法政大学の大学院に通い、修士論文をベースに『自治体職員の「自治体政策研究」史』という単著を出版された。版元の公人の友社のサイトに目次が掲載されているが、その第4章「自治体職員による自治体政策研究活動」のトップに、「1977年現代都市政策研究会」が紹介されている。今回の報告は、著書をまとめた経緯や狙い、さらには活字にできなかった裏話などが語られ、登場人物の多くを知っている参加者としては、次々記憶を呼び覚まされるものであった。

本書をまとめた小関さんの狙いは、自主研究活動の一次資料を後世に残すことだとお話しされたとおり、本書は自主研究会の活動記録や回顧禄ばかりでなく、多くの関係者にインタビューを行い、記録の裏付けや、特に回顧録の誤りや不整合なども明らかにするものとなっている。我が都市研についても記念誌などの資料を提供させて頂いたことで、本書のいわゆる「多摩の研究会」ではないことをはじめ、同じ大学のゼミの卒業生が、卒業後もゼミのテキストであった岩波講座「現代都市政策」を読み続けようという会の出自や名称の由来を正確にとらえている。そればかりでなく、会の成立を19775月だとすると、「多摩の研究会」の嚆矢にあたる市政研究グループより数か月早いので、都市研が記録に残る(さらには現在も活動を継続している)自主研究会としては最も早く成立していることも明らかにされた。欲をいえば、同書201ページに掲載された「東京自治体学フォーラム役員」名簿に、総合司会を務められた石崎さんをはじめ、多くの都市研メンバーが関わっていることや、自治体活性化研究会との関りなど、その後の都市研メンバーの活動の経緯も記録していただきたかった。もっとも本書の中心は「多摩の研究会」と、それに影響する松下圭一氏の理論と実践にあるので、都市研は傍系であるとともに、神奈川や特別区など、自治体学会に結集するその他の潮流については本研究の対象外であることを付言しておく必要がある。

本書の最も大きな意義は、当日の質問の最初になされた「都市研は当初のメンバーがいまだに中心を担っているように後継者が育っていないが、今後はどうしたらよいか?」という問いの回答にあった。小関さん曰く、同じ会の中で後継者を育てる必要はない、会の活動記録さえあれば、のちに同様の活動をしようという際のハードルを下げる効果があるということであった。小関さんも歴史に残る自主研活動の中に、東松山市の先輩職員の名前を見つけて勇気づけられたようである。

本研究の今後の可能性は、2000年代交流型自主研活動を第2次自主研究ブームと位置づけて冒頭に紹介していることにある。本書において本論をなしている第1次自主研究活動との関連は見いだせなかったようであるが、第1次が第2次にどのような影響を与えたか、人的なつながりはあったのかといった面を深めていただきたいと願っている。そのことが、新型コロナで絶えた第2次ブームを超え、コロナ後に第3次ブームが来ると語られた報告者の意見を裏付け、我々の今後の活動指針ともなるように思える。例えれば子が親の背中を見て育つための背骨(バックボーン)となる研究である。

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