現代都市政策研究会2020年9月例会感想
「農とともに受け継がれたみどりを守る」を聞いて
K. S.
私の住んでいる三鷹ではまだまだ農地が残り、徒歩10分もかからないところにある近所の畑の直売所(アウトドアな露店小屋)には不揃いのにんじんや蕪、キュウリなど季節の野菜を一皿100円から数百円で購入出来る。農家のかなり高齢な人が生産と販売をしており不在の場合は箱に入金するよう貼り紙があり、時にふとどきな者がいるようで1円とか5円とかで持っていってしまうこともあり、不正防止の注意書きの紙が貼ってあるようなところです。
こうした農家の生業のお陰で日々の食生活に時々インパクトを与えてくれるが何よりもそうした農業を身近な都市の中で営んでくれていることを感謝しています。
そうした農家ですが農地の維持の問題があったのです。
2.農地を守るには
都市の農地が宅地並みに課税されると広大な土地に課税されることになるのだから維持が困難になる。これまで市街化区域内の農地は「宅地化すべきもの」として位置付けられ、市街化区域内の農地の固定資産税は、宅地並評価・宅地並課税を基本とされた。宅地並みに課税されると税額はおよそ300倍になることが説明された。そのために1991年以降、市街化区域の都市農地を対象とした生産緑地法が改正された。生産緑地は、緑地機能のほか、将来の公共施設用地としても評価して保全された。生産緑地の指定により農地評価・農地課税(30年間の農地管理義務と開発規制)とされ、生産緑地は終身営農を条件に相続税の納税猶予が猶予された。30年を経過すると市町村長に買い取り請求が出来るが買取できず、他の営農者も買い取れないと宅地化が進んでしまう2022年問題が生じて来る。このため特定生産緑地が設けられ、生産緑地地区の都市計画の告示日から30年が経過する 生産緑地のうち、所有者等の同意を得て、市町村長が指定したものであり、指定された場合、市町村長に対する買取り申出期日が10年先送りされるとのことです。
一方、都市農地を守るため平成27年4月に都市農業振興基本法が制定されました。
同法は基本法では、都市農業の振興に関する基本理念として、
① 都市農業の多様な機能の適切かつ十分な発揮と都市農地の有効な活用及び適正な保全が図られるべきこと
② 良好な市街地形成における農との共存が図られるべきこと
③ 国民の理解の下に施策が推進されるべきこと
を明らかにするとともに、政府に対し、必要な法制上、財政上、税制上、金融上の措置を講じるよう求めています。(農林水産省HP都市農業振興基本法概要など諸々抜粋:https://www.maff.go.jp/j/nousin/kouryu/tosi_nougyo/kihon.html)
平成28(2016)年5月に同法に基づき国は都市農業振興基本計画(以下「基本計画」という。)を策定された。この基本計画では、従来、「宅地化すべきもの」とされていた都市農地の位置付けを、都市に「あるべきもの」へと大きく転換するとともに、都市農業の振興に向けた施策の方向性等が示された。
税制上の措置については、現行の税制上の措置が果たしている役割を評価した上で、以下の課題について課税の公平性等に配慮しつつ、政策的意義や土地利用規制を踏まえた税制措置を検討される。
・保全すべき農地の資産価値や農業収入に見合った保有コストの低減
・生産緑地等を貸借する場合における相続税の納税猶予の適用
具体的な税制上の措置については他法により示されるのか。
また、地方自治体は基本法第10条により、地方公共団体は、都市農業振興基本計画を基本として地方計画を策定し、公表することとなっている。
例えば大阪市の計画では基本方針を都市農業振興基本計画に即した「担い手の確保」及び「土地の確保」の2つの観点から農業施策に取り組んでいくとしている。
「土地の確保」には(1)生産緑地制度の活用では、条例制定により、区域規模を、500㎡から300㎡へ引き下げることをめざすとしている。また、防災協力農地登録制度の推進などにより農地の活用を図るとしている。これにより生産緑地地区を1ha追加認定させ、新たな都市農業の用に供される土地の創出を2件増やすことを具体目標としている。
3.おわりに
従来市街地の農地が宅地化すべきもののとしていたものが市街地にあるべきものとして方向転換されたことは都市農地の存続に大きな援護となった。一方個人レベルになると個々の農地所有者にとっては個人保有の土地として自由に活用したい立場もあり一概に保全に傾斜されることを望まない所有者もあるだろう。
しかし今や都市農地は地域住民にとっては都市環境の形成にとってなくてはならない公共空間とも言えるかもしれない。
今後も税制上の措置は国に対応が求められるが、農家にとっても地域住民にとっても相互に効用があるような仕組みづくりが地方公共団体の都市農業基本計画によってしっかり築き上げられることが求められる。
コメント
コメントを投稿