現代都市政策研究会2020年11月例会感想

 

「心の総有」の可能性

                                     J.H.

講師の野口さんは絶好調であった。本人談で3回目という都市研講師で、これまで以上に楽しそうに語られた背景には、野口さんのこれまでの各地での実践があることが伝わってきた。お話しの中で出てくる固有名詞や異論・反論は、野口さんが積み重ねてこられた議論の成果でありながら、必ずオチがあり、聴衆の爆笑を何度も誘った話術は時間の経過を忘れさせるものであった。図らずもこの日、何十年ぶりという参加者を含めた久々の15名もの参加があったことは、コロナ時代のリアル開催の貴重さを思い起こすものであった。

とはいえ、話しの内容は大変高度かつアクチュアルなものであった。かつての社会主義をかかげる国が推し進めた国有化でもなく、単なる共有とも異なる現代総有という考え方に意義がある。今年、「所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法」が制定されたものも、全国的に所有者不明土地が増加し、その処分が課題となっていることの現れである。空き家問題の背景にも、相続放棄等による所有者不在物件の存在がある。不在者財産管理人という制度もあるが、活用するには膨大な時間とコストがかかる。固定資産税も払っていないような物件であれば、所有権をなくしてもいいと思うのだが、引き取り手がないのが実態のようである。

ここで求められるのが、現代総有、より一般的にはコモンズの考え方である。平たくいえば、利用するみんなの物という考え方である。所有から利用へと言われるシェアエコノミー時代には、利用者の責任が問われてもいいと思う。物件の適正管理の責任を利用者に委ねることだ。さらには、みんなの物という曖昧さをどのように克服するか?ここは少しでも利用した人や利用したい人が責任を分担する仕組みがあるといいと思う。責任を押し付けあうのではなく、分かち合う文化を創造することが野口さんの言う「心の総有」の可能性だと思った。野口さんも関わっている現代総有研究所(下記サイト)の活動をフォローしていきたい。

http://www.soyuken.jpn.org/index.html

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