現代都市政策研究会2021年12月例会感想

       練馬区における新型コロナウイルス感染症対応のお話をお聞きして

                                                 M.     O.

 新型コロナウイルス感染症への対応について、保健所の最前線の現場を引っ張ってこられた健康推進課長の大木裕子さんのお話を伺いました。

 第5波の感染者数の急増に対応するために、人事課と交渉して応援の人員組織のやりくりをする課長としての取り組み。さらに、本来は、「新型インフルエンザ特措法」に基づいて、国は「基本方針」、自治体は、「行動計画」を策定して対応するスキームであったが、さまざまな想定外の事態が発生して、自治体の現場は、独自の方策を編み出して対応をしてきた様子が語られました。

第6派に向けては、地域医療と公衆衛生行政の連携を強化するために、自宅療養者への医療提供体制をさらに強化するために、①かかりつけ医等による健康観察や、②電話診療を中心とした在宅医療支援、③酸素・医療提供ステーションの設置など練馬区独自の施策を検討し、厚労省にも好事例として評価され、全国に紹介されるなど、地元医師会との調整・話し合いによる制度設計を担われたことなどが話されました。

新型コロナ対策においては、国・都道府県・市町村特別区のそれぞれの行政組織がどう機能したのか、機能しなかったのかという検証が重要であり、また、今後、どのような権限と責任に基づく役割分担が必要なのかの議論が必要です。大木さんは、入院調整やPCR検査などについては、都が強い権限を持って広域的調整を行うことが重要と話されました。

個人的な感想として、危機事象が発生した際には、ヒエラルヒー型の危機管理組織は機能不全に陥りやすく、実際に、被災者(感染者)と相対せざるを得ない現場が底力を発揮せざるを得ない状況に追い込まれ、また、その現場から効果的な施策が生み出されるのではと考えています。危機管理において必要なのは、権限の集中ではなく、現場への権限の分散ではないかということを考えています。

練馬区のケースは、保健所設置市として権限を持ちつつ、自治体の規模としても適切であり、地元医師会などの多様なステークホルダーと調整・交渉を重ね、独自の施策を編み出すことができたという好事例ではないかと思いました。そして、何より重要なのは、独自の施策を生み出す能力を持った自治体組織と職員の存在があったということです。新型コロナもいったんはおさまりを見せていますが、いまこそ、自治体現場におけるさまざまな実践を検証し、好事例を横展開していく取り組みが重要であると痛感しました。

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