現代都市政策研究会2022年4月例会(まち歩き)感想
「荻窪周辺を歩く」に参加して
H. S.
矢野さんに案内していただき、6人で杉並区のまち歩きをした。
最初に浜田山から松本清張邸に向かった。私は小説よりも平野謙(1907―1978)の評論で松本清張を知った。純文学と推理小説、大衆小説という区別はないというのが平野謙の主張で、これは形を変えて議論が続いた。いまではラノベとかアニメと紙に書いた文章という分野の関係にあたるのではないかと思う。
矢野さんが小説から入ったかどうかは分からないが、4月1日に亡くなった見田宗介(1937―2022)の縁が強いのではないだろうか。見田氏はたしか松本清張の小説の構造を評論していた。矢野さんは定期的に見田宗介氏の集まりに行っていたそうだ。この後に、石井桃子邸に行ったときも見田氏の関連で知っている由。見田さんを介しての人のつながりをずっと続けている矢野さんは偉いと思った。
雨だったが、日本的な湿度のある空気の中で歩くのは新鮮だった。近衛文麿の住んだ荻外荘も明るい陽射しよりも主人を失った屋敷の外観という感じがした。
これらの有名な個人の住まいに比べ、三井のパークシティ浜田山は電線もなく広い通りに立派な邸宅が並ぶ。外国にある本来のマンションというべき住宅街だった。お金持ちはいいなあ。うらやましいと同時に、ここに住む人はセコムで家ごとにセキュリティがしっかりされているから、ふと思い立って隣の家に行くということはないのだろうなとも思った。お金というよりも理詰めで住まうのだろうと。その人が芸術家であれスポーツ好きであれ、ある分野での関係はあるだろう。けれども面倒ごとや厄介ごとも含む地域での関係とは切れているのだろうなとも。悪ガキはいないよな。それを感じただけでも歩いてよかった。
太田黒公園では、個人で銀杏並木があるような庭園を持ち、遺族が杉並区に寄付したと聞いて、なんて裕福な区民と区だと思った。私は、紅葉の頃、ライトアップの太田黒公園に来たことがあったが、春の新緑もよいと思った。しかし、一番残念だったのはタケノコがいっぱい伸びて竹になりかけていることだ。やっぱり筍はちゃんと食べなくちゃいけません。
杉並区立中央図書館は黒川紀章の建築が老朽化して2020年9月に改修したのだった。建物よりもウッドデッキのある「本の広場」が周辺の木々の間に整備されていて素晴らしい。これからのまちづくりのモデルになると思う。従来はもっと木が立て込んでいて見通しが悪かった。開放感があり明るい戸外で読書するのは子どもも大人も魅力だろう。縁側とかこれまでの日本の住まい方とも通ずる周辺部の活かし方だと思った。
いろいろな体験ができてありがたかった4月例会だった。
最後に、案内して頂いた矢野会員、また、学生を送ってくれた早川会員にも感謝する。ありがとうございました。
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