現代都市政策研究会2023年(令和5年)2月例会感想
テーマ「自治体職員が見た欧州コンパクトシティの挑戦」 に参加して
T. I.
「欧州コンパクトシティ」が日本で知られるようになって約四半世紀。私も1998年にストラスブールとフライブルクを訪れましたが、一條さんのレクチャーからは、両都市がその後も取り組みを進め、都市の魅力、活力、求心力が高まり、市民がその恩恵を享受し生活の質が高まっていることが見て取れました。翻ってわが国では、都市計画制度やその原則、公共交通の位置づけの違い 等々から、一部自治体の試みも十分な成果を生むに至っていない…、という現状。まさに“失われた20年”の一例を見た思いでした。
なぜ我々は変われない、変えられないのか? 一條さんが指摘された理由は全くその通りで、しかもそれらは非常に変えにくい、変わりにくいものばかりです。そして、中心市街地の疲弊、公共交通の維持困難、空家空地の増大、公共施設の老朽化と維持管理費のひっ迫…、20年前の「将来の問題」が一斉に噴き出して、後手後手にその対応に追われ始めています。できない理由を語り続ける余裕は、もう無さそうです。
人口減少社会における持続可能な都市像として、「コンパクトシティ」は間違いなく有効な解であると思います。しかしそれを進めるには、既存の制度や背景の考え方や意識など、私たちの社会の「当たり前」を大きく変える必要がありそうです。つまり、多くの市民の理解、納得、共感なしには、道は開けない、ということですね。
多くの市民にとって「コンパクトシティ」は、クルマや郊外ショッピングセンターを手放して、今とはかなり違う生活スタイルへ移行することを意味します。それが我慢と忍耐を強いられるものか、それとも新しい楽しさ快適さに満ちているのか?。私たち専門家や行政関係者が思うほど、まだ市民の支持、共感は高くはないのではと危惧します。私たちは市民に対して、「コンパクトシティ」のワクワクする生活像を提示し、対話を重ねていくことで、「当たり前」を変える社会のチカラを育むことも求められているように思います。
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