現代都市政策研究会2023年6月例会感想
「人は危機感では動かない。展望があって人は動く」
そうか!と思った。都市を知っている野口和雄さんの言葉だから説得力があった。
木造建築は老朽化したら壊れていくもの。それよりもRCやSRCの建築は朽ちないからこそどうするのかという指摘は、私が考えたことがないものだった。老朽建築とは木密地区の廃屋と思っていたので、実は核心は高層建築にあったとわかった。
例会では、大石田さんの一貫して市民のための行政を続ける意見、室地さんの都市づくりの経験に基づく話に感心した。また、台東区の草野さんやさいたま市の木村さんのような若手が参加してくれたことに都市研にも展望=未来があると思った。
私は都市づくりには素人なので、税の視点で述べたい。
① 高層建築物の売買契約書には、解体費用を重要事項説明書に記載することを法定化するのが現実的と思う。追加費用発生基づく売買契約自体を制約しないので業界からの抵抗に抗弁することが易いと思うからだ。
② その上で、その解体費用を課税標準として市町村条例で法定外税をつくる。使途は所有者不明建築物の解体費用や所有者の捜査費用に充てるのでよいし、他の建築物政策に充てるのもよい。新たな課税は国民に不人気なので国の政策にはならないだろう。特に国交省や経産省は消極的で専門家の意見聴取やなんとか調査会を作って、検討ばっかりして効果なき政策にするだろう。一部の市町村が先行して、マスコミや専門家から評価されるようなら、固定資産税がらみなので総務省で押すことも可能だと思う。自治を尊重しているし、国補助金を求めないという点で国の規律を乱すものではないからだ。
③ また、未登記対策での、相続登記の義務化は、私は所有者不明土地の現実解にはならないと思う。どうするか。「展望」の視点からは、国策として「時限立法」で、相続登記手数料は無料にするのがよい。5年の時限で定める。どうせその後は延長になるだろうから、実は期限は3年でもよく、緊急なんちゃら法という名前にすれば、やっている感が出るので法制化しやすい。こっちは議員立法の可能性があるかもしれない。もちろん動かすべきは自民党です。
④ 経済的価値の低い山林や農地の所有者不明土地や相続が進まない土地について本気でやるなら、そうした土地を「所有権停止(モラトリアム)基金」のような国の機構に入れて、固定資産税を遮断した上で、野口さんのいうようにフィリピンに倣い5年で所有権を無効にするのがよい。その後は市町村に所有権を設定する。経済的価値がないので市町村の負担になるばかりだから、その土地管理費用は地方交付税に需要額算定するとよいと思う。
⑤ 所有者の確定、登記によって入会の解体が進むことについて、野口さんは新しい現代的総有の考えを出しておられる。それは、すごい提案だと思うのだけれど、私は地方自治法294条「財産区」を設置するのがよいと思う。もっとも財産区は新たな設置を想定していない条文だし、総務省の官僚は少しでも解体、廃止させたい発想を持つから、これは政治運動としてやらないと進まない。例えば、登記しようとしていろいろ調べたら、共有財産を管理している実態があったとして、新設ではなくて、財産区を「発見」したという屁理屈で認めさせたらどうか。それをステップにして、新しい法律をつくるのがよいのではないかと思った。
いろいろ述べたが素人考えにすぎない。これをきっかけに所有者不明土地問題が一歩が進めばよいなと思った。刺激的な例会でした。野口さん、ありがとうございます。
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