現代都市政策研究会2023年7月例会感想

新しい小説の読み方はどのように生まれたのか

T.      M.

 矢野勝巳会員は、今年の5月に小説から地域を読み解くといった視点から『文学する中央沿線』(ぶんしん出版)という単行本を出版さました。売れ行きも好調のようで、初版本はなくなり、第2版が用意されているとのこと。図書館では本を読むのに予約待ちとのことです。

都市研でも小説からまちの魅力を再発見するといったテーマで、これまで国立市と杉並区(荻窪駅周辺)を矢野さんの案内でまち歩きを行いました。また、私自身も矢野さんの視点に興味を持ち、小金井市主催の矢野さんの講演会に参加したことがありましたが、そこには120名近くの聴衆が参加されていて、矢野さんの切り口にとても関心が高いということを知りました。

ところで、私自身も小説は結構読みます。私の小説の読み方は、小説の設定やストーリー、登場人物、ものごとの展開や結末、意外性など小説自身の持っている面白さや醍醐味(これが一般的な読み方だと思いますが・・・)を味わうこと。そしてもう一つが、ある物事にどんなふうに人は思い、行動するのか、作家の目を通じて映し出された登場人物の心の動きを日々の実際の人とのやり取りに参考にしているということです。後者は、私が40代後半になってから加わった読み方です。しかし、小説が地域をどのように描いているかといった視点は、私にはこれまでありませんでした。

そこで、7月の例会では、どのような過程でそのような視点が生まれたのか、発刊のきっかけやどのように調べているのかとても興味がわきました。

矢野さんからは、きっかけの前提として、『没後50年 太宰治展~心の王者~』(1998)をはじめ、『三鷹市市政施行60周年記念展 三鷹ゆかりの文学者たち』(2010)など三鷹市の中で一般職でありながら大規模な展覧会を企画・開催するといった特殊な仕事を長く担ってきたこと。葛飾区図書館友の会から始まった講演会(2019年、以降20235月までに20)。「くにたちブッククラブ」に入ったこと(2019)。橋口敏男氏(元新宿歴史博物館館長=事務職)の著書を読んで、事務職でなければ書けない、専門家では書けないことが書いてあり、自分でも書けるのではないかと根拠のない自信となったことなどが紹介されました。現職の時は「三鷹」という地名が載っていれば良かったが、講演会を通じてこういう見方があるということに気が付かされたとのこと。矢野さんの切り口に磨きがついたのは、つい最近になってからということに驚かされました。まだまだ矢野さんの仕事は進行形のようです。自分は作家ではないので小説は書けないが、取り上げた作品や小説家には敬意を表しており、是非、皆さんに読んで欲しい作品を取り上げているとのこと。私もおすすめ本を手にしたいと思います。 

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