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現代都市政策研究会2024年11月例会感想

 「固定資産税の業務から実務の課題を考える」を聴いて H.      S. 森谷さんは三鷹市、金澤さんは寒川町、2つの自治体の固定資産税の仕事の比較ができて面白かったです。 例えば、航空機を飛ばして空から家屋の変化を調査するという方法も寒川町ではやっているけれど三鷹市では予算の関係でやっていません。 それでも、職員の努力でなんとか調査してやっています。私は航空調査をして、今のマンパワーはもっと調査内容の質に振り向けられないかとも思いました。 2人の違いは市(町)の政策の判断によるのでしょう。しかし、自治体が独自の収入を得るのは税だけしかないので、税が住民の信頼を失ったら市(町)が立ち行かなくなるという意識がちょっと低いのではないかとも思いました。これは、三鷹市だけではなく東京都も同じで、人員削減はまず税部門からとなっていて、しかも何十年も続いています(困ったものです)。 税なら国も同じだろうという人もいると思います。けれど、税金の制度から見ると国は主に申告税、つまり納税者が自分でこれだけの額を納めますよという申し出(申告)をする仕組みです。間違ったり申告しなかったりすると納税者が悪いんだよとなります。ところが、自治体の税は主に賦課税です。自治体があなたはいくら納税してくださいと伝え(通知)して初めて税金を納める義務が生じるという仕組みです。その典型が2人のやっている固定資産税です。たまに「固定資産税が間違って課税された」「何年も間違った税金を取られていた」などとマスコミの話題になったりします。ですから、自治体の職員の専門知識の質を確保することと物理的に対象建物を全部カバーすることが必要になってくるんです。 三鷹市でも寒川町でも全部の家屋を実際にまわり切れないというのは全国の自治体に共通するマンパワー不足の悩みではないかと思いました。 そんな困難な状況でも、寒くてもヒートテックを着て、台風が来ていてもお客さんが断ってこない限り嵐の中を行く覚悟で仕事をしているのに頭が下がります。 事例を通じて税を含めて広がる住民の生活課題に向き合う2人の姿勢に心を打たれました。「隠れ生活課題にも寄り添っていく必要がある」というのはすべての自治体職員に通じる言葉だと思いました。これからも2人に活躍して欲しいです。

現代都市政策研究会2024年12月例会案内

 テーマ「実務の現場から生活保護の現状と課題を考える」 講師 高橋逸平氏(三鷹市生活福祉課課長補佐・福祉支援係長事務取扱)   生活保護については、ニュース等で、自立とは何か、生活保護の運用の限界、受給者の増加など様々な現状と課題が提起されています。 今回は、自分が関わっている実務の現場からの現状をお伝えできればと思います。 日々の業務について、ケースワーカーの実情、コロナ禍の影響、都や国との関係、市役所他部署との比較と関わり方、福祉関係他機関との連携、仕事のやりがいなどいくつかのトピックを紹介しながら、実際の課題について考えていきます。  (文責・高橋逸平) 1.日時   2024年(令和6年)12月15日(日)午後2時~午後4時30分 2.場所  三鷹駅前コミュニティセンター 4階会議室(1)

現代都市政策研究会2024年度真鶴合宿感想 その1

 都市研2024真鶴合宿に参加して T.        I.     真鶴町といえば、やはり「美の条例」である。条例施行から30年を経て、町はどう変わったのだろうか? 施行後間もない頃に見た街並みを思い返しながら降り立った真鶴駅前の景色は・・・、拍子抜けするほど昔のままなのでした。 内心あれれ、と思いつつ駅前の食堂で役場の卜部さんや都市研の皆さんと合流。この店、一見よくある地方の古びた駅前食堂そのものですが、移住者の方が数年前に始めた本格ナポリピッツァ店。外の看板やPOP、家具調度類などはオシャレでちょっとアメリカンな感じです。おや? 真鶴町は実は大分変わっている? いや、やっぱり変わっていない? ピザの昼食のあと、卜部さんの案内で真鶴港を囲む急斜面に形成された真鶴の街並みを少しずつ下りながら、主に30~40代位と若い移住者の方々を訪ねていきました。細いセトミチ沿いに密集する家並みや、そこから眺める海を望む風景には、やはり大きな変化はないように感じられました。しかし皆さんから伺うお話や、拝見したお店や仕事場、お住まいの様子などからは、この小さなまちに新しいビジネスやライフスタイルの種が蒔かれ、芽吹きつつあり、それを地元の方々も見守り、時にちょっと助けたり、助けられたり、あるいは少し距離をとったりもしながら徐々に受け入れ、そうしたまちの状況に馴染みつつある。そんな変化、新しいまちづくりの胎動が垣間見えたように感じました。 さて、「美の条例」で真鶴町はどう変わったのか? あらためて考えてみたいと思います。「拍子抜けするほど変わっていない」ように見えた街並みは、このユニークな条例が話題となった当時の“熱気”…「美の基準」をガイドラインとして、地域性を反映した良好な街並み景観やコミュニティ、自然環境などの保全、創造が活発に推進されていくという期待感…を思うと、いささか物足りなくもあります。しかし卜部さんは、「美の基準」は順守すべきガイドラインではなく、町民(建築主、開発者)と向き合って真鶴町らしさを共有し、それを保全、創造する知恵や工夫を引き出すツールである、という趣旨のお話をされていました。そしてまち歩きでは、そうした対話と工夫の30年間の痕跡が、実はまちのそこここにあるのだということがわかりま...

現代都市政策研究会2024年11月例会案内

 テーマ「固定資産税の業務から実務の課題を考える~空き家問題、委任状のあり方など~」 講師 森谷汐里さん(三鷹市職員)・金澤光里さん(神奈川県寒川町職員)    11月の例会では、若手自治体職員のお2人に登壇して頂き、現在、自ら関わっている税務に係る業務から実際の実務の課題等についてお話を伺います。  自分が関わっている税務事務はどのような流れで進むのか、その流れの中で起こる市民とのトラブル、どんな要因でトラブルになるのか、どのように解決しているのか、また、税務事務と他の事務との関係、事務に対する都道府県や国の関与はあるのか、他の組織・事務との連携はあるのか、税務を担っている組織構成はどのようになっているのかなど新鮮な視点で語ってもらい、合わせて仕事を見つめ直す良い機会になればと思っています。(文責・室地隆彦) 1.日時   2024年(令和6年)11月24日(日)午後2時~午後4時30分 2.場所  三鷹駅前コミュニティセンター 4階会議室(2)

現代都市政策研究会2024年9月例会感想

 真鶴町の新たなまちづくりの取り組み:美の基準の今 U.   K.   都市研究9月例会で、1994年に施行された真鶴町のまちづくり条例、特に「美の基準」について、長年にわたり真鶴町職員として関わってきた卜部直也さんが講師となり、町民の捉え方や現状について話を伺いました。卜部さんは大学時代に地方自治を学び、この条例があることがきっかけで職員となったそうです。   印象深かったのは、この基準があることで、町に空地を作って人が集まれるようにし、人の気配が感じられるようにする、集合住宅を建設する際には、ワンルームや家族向けなどの対象者を限定せず、若者や高齢者が共に生活できるようにして、高齢化が一気に進行しないよう配慮していることでした。  また、人の気配とは、たとえば漁師が仕事をする姿が見えるような生活風景が景色となることを意味し、それが「美」であるとされています。都市部では生活風景を排除することが良い景観とされがちですが、逆の発想が真鶴町の魅力になっていることにはまちづくりの魅力として参考になりました。 ■民力を活用した地域づくりと活性化  ハード面だけでなく、ソフト面での取り組みも興味深いものでした。  その一つが、2014年に立ち上げられた「真鶴町活性化プロジェクト」です。このプロジェクトでは、職員が自主的に人を集め、提案から実行まで行うことが推奨されています。上司の指示で受動的に動くのではなく、職員が自ら考え実行することで、モチベーションの向上にもつながっているようです。実行予算は最大で5万円という限られたもので、工夫が求められることになります。  このプロジェクトの一環で、スタートアップ・ウィークエンド(※)が行われ、漁師町ではなかなか出会えなかったエンジニアやクリエイターと町の人々が交流する機会が生まれました。空き家を利用したお試し移住や、スタートアップ事業者やクリエイターが町に滞在するようになり、真鶴町の魅力が再認識され、Uターンも増えていることも興味深い報告でした。 ■住民としての職員の役割  他にも興味深い取り組みが進められていることが分かりましたが、卜部さんの話を通じて、行政職員が主導するのではなく、住民や町外の事業者が活動しやすい環境や人間関係を築くことに重点が置かれていることが感じられました。職員は住...